EVRICAの利用シーン

複雑な制御/信号処理アルゴリズムを実装するシステムを開発する際には、実機を動かしながらシステムのふるまいを評価したり、
デバッグしたりしなければならないケースがよくあります。主にこうした局面で、EVRICAは威力を発揮します。

EVRICAの利用シーンとして、例えば以下のアプリケーションを想定しています。
ロボットやFA機器、プリンタなどのモータ/アクチュエータ制御

ロボットやFA機器、プリンタなどのモータ/アクチュエータ制御

回転数を細かく制御したり、省電力化を徹底したりするため、DCモータの制御方式として、PWM制御やベクトル制御を採用するケースが増えています。このような制御では、センサからの入力信号やモータの逆起電力に基づいて、プロセッサ内部で高度な演算処理を行い、その結果に応じた信号をモータの駆動回路へ返します。動作検証を行う際には、実際にモータを稼働させながら、演算処理の詳細を解析する必要があります。

EVRICAを利用すると、制御変数の変化を可視化したり、長時間記録したりすることが可能です。サンプリング性能が高いので、高速な制御にも追随できます。例えば、ロボットや工作機械、FA機器、プリンタ、エレベータ、空調機器、輸送装置などに使われる産業用モータモジュール、カメラ機器のレンズ制御や手ぶれ補正制御、自動車などに使われるモータ/アクチュエータの動作検証に有効です。

高効率電力変換やディジタル電源制御

高効率電力変換やディジタル電源制御

太陽光発電では、太陽光パネルが生成した直流電力を家庭用の交流電力に変換するため、「パワーコンディショナ」と呼ぶインバータ装置を使用します。太陽光パネルの発電量は日照時間や気象条件、温度などの変化に伴って大きく変動します。効率よく安定した電力を得るため、パワーコンディショナが、出力を最大化できる最適な電流と電圧の組み合わせ(最大電力点)を随時計算して、きめ細かい電力制御を行っています。

このようなシステムでは、高性能なプロセッサが複雑な制御アルゴリズムの演算処理を行っています。EVRICAを利用すると、電力制御の過程や制御変数の変化を可視化でき、パワーコンディショナの動作検証やソフトウェアのデバッグが容易になります。

同様の理由で、ディジタル信号処理によって電源回路のスイッチングを制御するディジタル制御電源の検証・デバッグにも、EVRICAは有効です。

工場の製造ラインやプラントの制御

工場の製造ラインやプラントの制御

工場の製造ラインやプラントでは、温度や湿度、照度、ガス、振動、塵埃(じんあい)などを環境センサで検知し、その結果を制御装置にフィードバックして最適制御を行うことがよくあります。例えば環境センサで外界の温度を測定し、温度が規定値より下がればヒータをONにする、といった制御です。

多数の環境センサからの入力情報を組み合わせて制御する必要がある場合や、非常に高精度の制御が求められる場合、プロセッサは複雑な演算処理を行わなければなりません。このようなシステムにも、EVRICAは有効です。メモリの中にある制御変数の変化を確認しながら、検証やデバッグを行えます。

電子楽器や音響機器のオーディオ信号処理

電子楽器や音響機器のオーディオ信号処理

電子楽器や音楽制作用のオーディオインターフェース機器、エフェクタ機器などの開発では、開発者が実際の音を聞きながらシステムの動作検証を行うことがあります。例えば電子ピアノの場合、鍵盤やペダルが備えるセンサから入力したデータと、音源チップで生成した信号波形を組み合わせて、出力する音を作ります。このとき、たとえ出力するのが1音であっても複数チャネルを同時に鳴らすことが一般的で、プロセッサは複数チャネルの演算処理(オーディオ信号処理)を並行して実行しなければなりません。

EVRICAを利用すれば、実際に音を出力しながら、チャネルごとの演算途中のオーディオ信号波形を確認したり、長時間記録したりできます。これにより、オーディオ信号処理ソフトウェアの評価やデバッグを効率的に行えます。

同様の理由で、音声(ボイス)を取り扱う信号処理システム(音声合成システムなど)の動作検証にも、EVRICAは役立ちます。